ヴィラには、いつにもまして人が多かった。
一周年を記念して、イベントがある。そのための新しい建物も出来たようだ。
あなたはドムス・アウレアに着くと、すぐに友人たちの待つアクイラに向かった。
「おお、来たね」
友人たちはグラスを掲げて、にぎやかにあなたを迎えた。席につくや、彼らは興奮して聞いた。
「きみ、ゲームは予約したかい?」
「あのプレミア犬――きみなら、きっと欲しがるって、今話していたんだ」
あなたは家令から何かメールが来ていたことを思い出した。ドラゴンからお姫様を救うゲームのことが書いてあったような気がしたが、仕事にかまけてよく確認しなかった。
「どの日も粒よりだがね」
彼らのひとりがテーブルにヴィラの最新のカタログを放る。
見開きトップにプレミア犬の特集があった。
七匹のプレミア犬。どの犬も100億セス投じても惜しくない、夢の犬ばかりだ。
日替わりでゲームイベントの賞品になっているらしい。
なかでもあなたの目をひく犬があった。
すでに裸に剥かれ、縄打たれ、カメラから顔をそむけている。美しい横顔だった。
豹のような野性味と優雅。目元を赤く染め、いやそうに撮影に耐える姿が処女の風情が凄惨なまでにエロティックだ。
「それ、だろ」
友人たちが笑う。
この犬は友人たちの間でも人気が高いようだ。
どんなゲームなのか、たずねると、
「ドラゴン&ダンジョン。実際に剣をふるって、怪物からプラチナ犬を奪ってくるって筋書きさ。まあ、実際に火で焼かれたりってことはないだろうが」
「この子のゲームは特に人気があるらしい。参加チケットを手に入れるだけでも苦労したって、家令が恩を着せてきた。獲得できたら自慢できるな」
「言っとくが、おれも欲しいからね。競争だぜ」
自分が賞品になるなよ、とほかの友人が茶々をいれる。「イベント会場からなかなか帰ってこない男がいるってよ。噂じゃ、ゲームに負けるとそのまま某おえらいさんのベッドに運ばれちまうとか」
「それは本当かどうかわからないが、けっこうきつい罰ゲームはあるらしいぜ」
友人たちは子どものようにはしゃいでいた。
「きみは? チケットとれたのかい」
あなたは白状しようとした。が、一応、家令に電話で確認した。
家令はすまなそうに言った。
『申し訳ございません、ご主人様。この子のゲームは特に人が集まってしまいまして――ご主人様は6番目の補欠になります』
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